みのりの故郷、島根県にある足立美術館に行ってきました。

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足立美術館は横山大観のコレクションと、世界的にもトップクラスと評価される日本庭園で有名です。みのりはこれまでいろいろ日本画を見てきましたが、横山大観は正直言って好きな画家ではありません。しかし足立美術館には横山大観以外にも東西さまざまの高名な近代日本画家による絵画コレクションがありますので、それらを網羅的に見てみたいと思っていました。そこでまずはとりあえず一回見ておこうと思い切って行ってきました。

足立美術館は四季4回の特別展を行っていて、今回の冬期特別展は大展示室で「心あたたまる優しい日本画」、小展示室で「うるわしき日本の女性たち」そして大観室で「横山大観コレクション選」という内容となっていました。

そのうち「心あたたまる優しい日本画展」では主に動物を描いた作品を約40点展示していました。この中でみのりが特に印象的だった作品は、竹内栖鳳「爐邊」「五月晴」「若き家鴨」「野雀弄梟図」、橋本関雪「雨後之朝」「南極老人図」、西村五雲「雪田宿鴨」、富岡鉄斎「群僊祝壽図」、川合玉堂「夕月夜」、都路華香「遊牛の図」の10点でした。

竹内栖鳳は、「野雀弄梟図」のみ30代の作品で、それまでの水墨画の伝統にのっとってそこに近代的洗練を施したもので、画面構成も素晴らしい秀作だと思いました。それ以外の作品は晩年の完全に栖鳳タッチが確立したことが現れているものばかりで、特に「若き家鴨」は複数の家鴨を縦に重なるように配置することで奥行きを表し、それらの形態を把握する線はスピード感あふれる勢いのあるもので、色彩の施し方も幾分奔放な感じでかっこいい、文句のない傑作でした。(下は「爐邊」)

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橋本関雪はさまざまな画風の持ち主で、そのどれもがみのりの好みという人ではありませんが、「雨後の朝」は二匹の猿が描かれていて、それらがかなりリアリティを感じさせるものであったのが驚きでした。というのも京都画壇の画家は動物を描くと誰もが上手にこなすものの概して眼や表情などに人間味を加味するのですが(それもみのりは好きです)、この作品ではまったく人間を感じさせるものはなく猿そのものだったからです。また水たまりのある地表や背景をにじみなど画材の濃淡によって描いているのも見事でした。

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また「南極老人図」は文人画の影響が強く出た作品でその豪快な筆つかいは富岡鉄斎との共通性を感じるものでしたが、関雪の場合は端正さの延長にある表現であることが感じられて、その点で独自なものであると思いました。

西村五雲は竹内栖鳳の弟的な存在でその画風も似ている部分が多いですが、対象を瞬間的に把握し素早い筆つかいで絵にしてしまうという点では栖鳳より勝っていたかもしれないと感じます。それが具象的表現の中に現れる抽象性の度合いに見られ、五雲の方がしばしば大胆に感じる場合が多いのです。「雪田宿鴨」はそのような作品でした。

富岡鉄斎は実はもう一点展示されていて、それは飴売りを描いたものだったのですが、彼にしては非常に珍しくこじんまりとして、描線は太く力強いものなれど印象としては端正さが全面的にでた作品でした。しかし上にあげた「群僊祝壽図」はまさに鉄斎の表現の力が爆発した作品で、これぞ鉄斎と手をたたきたくなるようなうれしいものでした。たくさんの仙人が画面の中に所狭しとしかし収まりよく配され、その場の大きなエネルギーがこちらにも大量に放出されていて、ずっと見ていると目眩がしてくるような作品でした。このような作品は鉄斎にしか描けないだろうと思います。

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川合玉堂というと懐かしい日本の田園風景を思い浮かべるのですが、「夕月夜」はそれより京都画壇との共通性を感じる作品でした。もともと彼も円山四条派から出発しているので、40歳の時のこの作品にそのような要素が現れていても当然のことでしょう。構図を工夫して余白も巧みに使って空気遠近法の手法により深い奥行きを感じさせています。画面中央にかかる橋を歩く人物を見ているとあたかも自分がその絵の中に入り込んだ気さえしてきます。これもまた文人画的鑑賞に適う作品で愛おしいものだと思います。

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都路華香の作品は牛の群れがたたずむところを描いた大きな屏風でした。ごつごつしてリアルな牛の描写も見事でしたが、やはりそれらをあえて重ねて配置することで奥行きを感じさせ、さらに金泥のみによって水路が地を這う地表や背景を見事に描いていました。かなり力の入った作品だと思います。彼の絵はあまり今まで見てきていないのもありますが、これまであまりピンとくる作品はありませんでした。しかしこの作品を見て俄然彼の作品に興味が湧きました。また彼は冨田渓仙の師でもあるのでこれからも意識してみようと思っています。

それ以外では榊原紫峰の作品が10作品ほど見ることができました。しかしみのりは改めて榊原紫峰の作品はあまり好きになれませんでした。というのも彼の絵は細かいところまでしっかり描かれていてまた西洋的な陰影の技法などを駆使していてさらには画材が影響しているのか、結果としてできあがる作品はどれも独特な光が発していて妖しく感じられるのです。一時は高値で取引されたという榊原紫峰、しかしみのりにはそれが不思議でなりません。

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菱田春草の作品もありました。しかし横山大観にも言えるのですが、彼らのトレードマークとも言える「朦朧体」は湿潤な空気を描くのにはその適性を示しますが、それが全体に導入されるとアクセントやリズムが失われて全く面白くなくなると思います。今回展示されていた作品も同様でしたので好きになれませんでした。

一方小展示室に展示されていた美人画は総じてクオリティが高いものが揃っていました。石本正、土田麦僊、寺島紫明、鏑木清方、山川秀峰、伊藤小破、伊東深水、上村松園など。美人画だけをまとまって見たのは初めてでしたが、一見みな同じような題材を描いていてもこうやって並べてみると画家それぞれの個性というのが際立っているのがよくわかってよかったです。その中で一般に上村松園が別格扱いされているのはみのりも納得するところでした。

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しかし松園以外でも山川秀峰と伊東深水の作品には動きや描かれる世界がビビッドに感じられて素晴らしいなと感じました。

さて、最後にみのりが苦手とする横山大観の作品群と初めて真正面から向き合ってみたのですが、結果としてはやはり苦手意識はまったく解消されませんでした。みのりが好む京都画壇の作品と比べると明らかに対象を描写する画力や画面の構成力が劣るように見えるのです。絵をあまり見ない人でさえ名前は知れている大観、きっとそれなりの存在意義があるのでしょうが、まだまだみのりにはそれが絵を見る楽しさという実感には結びつきません。まぁそれはそれでいいのかなと思っていますが。

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美術館を出る前にミュージアムショップで「足立美術館名品選」という図録を購入しました。今回見た作品も結構掲載されていましたが、まだまだ見ていない作品も数多くあります。それらはどれも一定のクオリティを持っているようですので、これからも足立美術館のコレクションを追っていきたいと思っています。