みのりがプライスコレクションを見たことで日本画の楽しみを発見したことは以前お話しました。その後は主に円山応挙と長沢芦雪の作品を見ることができるところをかたっぱしに調べて、行けるところからどんどん見に行くということをしていました。そんな時に茨城県にある天心記念五浦美術館で行われている展覧会で円山応挙の絶筆とされる屏風が展示されていることを知り、いてもたってもいられずに出かけて行きました。

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その展覧会は「京の優雅 ~小袖と屏風~」と題された京友禅の老舗「千總(ちそう)」のコレクション展で、綺麗に染められたり刺繍の施された小袖が多数展示されていましたが、みのりの専らの関心は後半に展示されていた屏風たちでした。お目当ての円山応挙の傑作「保津川図屏風」はもちろん、それ以外にも長沢芦雪の屏風もあって大いに興奮しましたが、その時初めて近代画家である岸竹堂の作品を見て、それまで見てきた江戸時代の絵画との違いとその魅力を知り、これからは明治以降の画家も追っていこうと思ったのでした。またその時は見られなかったものの図録で知ったさまざまな千總のもつ充実したコレクションの数々をいつの日か見たいものだなと思いました。

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それから7年経った昨年、千總ギャラリーで「岸竹堂と今尾景年 明治の千總と京都画壇 」展が開催されました。こじんまりとしたスペースに置かれた岸竹堂と今尾景年のそれぞれ一双づつの屏風をメインに、千總の友禅の下絵となった作品などがちりばめられたこの展覧会は、数は少ないものの十分に満足のいく内容でした。とりわけ花鳥画の小品のイメージが強い今尾景年の大作「群仙図屏風」は、景年ならではの端正さも兼ね備えつつかなりインパクトの強いものであったと思います。

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千總は今年創業460年を迎えました。それにちなんで京都文化博物館と千總ギャラリーと二つの会場にわけて「千總460年の歴史 -京都老舗の文化史-」展が開催されました。千總所有の素晴らしいコレクションがまた見られるということで、みのりはまたとても楽しみにして京都へ前期・後期と見に行きました。

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京都文化博物館では、千總の歴史をたどる資料とコレクション作品が展示されていました。円山応挙の「保津川図屏風」や岸竹堂の「大津唐崎図屏風」などといった、かつてみのりが魅了された作品も並んでいましたが、みのりがもっとも感銘を受けたのは一見で簡単に見逃されてしまうであろう作品でした。それは菊池容斎の「千切花図」です。奈良の宮大工をルーツにもつ千總は春日大社の祭の際には毎年千切台を奉納していたそうで、その千切台を描いた画が数種展示されていたのですが、そのどれもが対象を正面からとらえて平面的に描いていたのに対し、菊池容斎は向かって左後方の視点から描くことによって、台に飾られた花を重ねて描きまたその台の配置からも見るものにその奥行を見事に感じさせていたのです。菊池容斎は幕末から明治初期にかけての江戸の絵師ですが、円山応挙のような立体性の表現に意識的であった画家がここにもいたかと驚きました。その弟子である渡辺省亭によく見られる表現は実は師から受け継がれたものなのかもしれません。(菊池容斎の「千切花図」は下の画像の上から3つ目の一番左)

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また明治時代の激動期に生き残るために、岸竹堂や今尾景年などの京都画壇の画家に下絵を依頼し、またビロード友禅などを開発して千總の近代化に大きく貢献した十二代西村總左衛門の絵師としての作品もいくつか展示されていましたが、それらはいずれも見事な文人画として成立するものでその前でしばし時を過ごしました。最近みのりは文人画がとても好きになってきました。

一方、千總ギャラリーでは、明治時代に千總が手がけた友禅と刺繍の技術を駆使した美術染織品で、宮内庁に買い上げられた作品が約100年ぶりに里帰りして展示されていました。それらはどれも当時の職人の超絶技巧が遺憾なく発揮されたもので、その中でも円山応挙の弟子のひとりの岸駒が師直伝の写生の技術を見せつける「孔雀図」(これも見ることができて感激でしたが)をまったくそのまま友禅と刺繍とで再現した「海棠に孔雀図」は、それぞれ並べて展示されていて交互に見比べることができましたが、もはや原画を凌駕していると思うほど見事なものでした。

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またビロード友禅で鷲を描いた大作も、そのずっしりとした存在感やほんもののもつ生命力が表現されていて素晴らしかったです。特に鷲から感じられる立体感は、染め上げられたビロード地の中で鷲の部分だけ表面をカットして起毛させることで実現されるもので、専門的な難易度などはわからなのですが、染色による表現を大きく広げるものであったことは間違いありません。

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その他、当然のことながら着物の展示も多かったのですが、それについては他のそちらに詳しい方にお任せしたいと思います。しかし、主に絵画に興味をもって行ったみのりにとっても十分見に行く価値のあった展覧会であったことは間違いありません。また機会があれば必ず見に行きたいと思っています。