遅くなりましたが、先日開催しました「to the south」のコンサートについてレポートします。しかしその前にみのりが彼女たちにコンサートをお願いしたそもそもの理由について先にお話しようと思います。

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みのりが「to the south」と出会ったのは一昨年の春でした。鍵盤担当の南方さんとはもう20年近く前からの知り合いだったのですが、彼女が2枚目のソロアルバムを出した記念のライヴを聞きに行ったところ、ゲストにヴォーカルのまこりんが招かれていて、そこで「to the south」のふたりが揃ったのでした。

ライヴでは彼女たちのレパートリーも披露されたのですが、それはみのりにとってはとても大きな衝撃でした。それまで聴いていた南方さんのソロの音楽は、ジャズやプログレッシブなどを基本としているインストでしたので、彼女が作るうたの入った音楽を聴いたのは初めてだったのですが、それがとてもしっとりとして美しいものだった上、まこりんの圧倒的なうたの力と正確なリズムで奏でられる打楽器が音楽の幅を大きくひろげていたからです。南方さんの確かな音楽的背景に裏打ちされたアレンジや演奏技術も改めて感心しましたが、なによりまこりんのうたはこれまでみのりが聴いてきた中でも一番のインパクトがあるものでした。そしてなにより素晴らしいと思ったのはそれがきっと誰にでも認められる間口の広いものだったことです。

またMCで垣間見られるまこりんの楽しいキャラクターもとても魅力的でした。うたはストレートなものなのに対してキャラは少し毒っぽく笑いをさそうもので、良い意味で正統的な芸人だなぁと感じました。

二人ともさまざまなプロジェクトをやっているので、このユニットでの活動は不定期でしたが、みのりはすっかりこのユニットのとりこになってしまったので、もっとたくさんこの二人の音楽が聴きたいと強く思ったのでした。それが今回コンサートをお願いしたきっかけです。

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さて、12月に入って初めての日曜日、いつものように穏やかに晴れた昼下がりからコンサートは始まりました。まずはあいさつ代わりの2曲が続けて披露されました。「daba 3」と「ホレハレ」。まさに彼女たちの魅力が全開のナンバーです。のびやかなまこりんのうたと緻密さと大胆さを併せ持つ南方さんのプレイが遺憾無く発揮された演奏の後、まこりん主導のMCとなりました。まこりんは小学校から高校まで横浜双葉に12年間通っていたという、横浜に深い所縁があるとのことでしたが、厳しい校風故にあまり街を出歩くことはなかったそうです。

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「to the south」というユニット名は、まこりんがソロ活動するにあたって南方さんにピアノを頼んで、それがだんだんグループ化したところで南方さんの苗字をそのまま英語にして名付けたものということ。だから和訳すると「南方」、ふたりでも「南方」です、と皆を笑わしたところで次の曲へと進みました。

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リルケの詩を和訳した「子守唄」とまこりんの詞の「背中合わせ」、どちらも南方さんの曲の2曲。これはまた別のこのユニットの魅力に満ちたものです。それは女性的なしっとりとした美しさ。決して甘すぎないぎりぎりのところを維持しているのが素晴らしい。その上でまこりんに歌われる言葉がストレートに心に届きます。

次はカバー曲が続きました。麻丘めぐみの「わたしの彼は左きき」(筒美京平作曲)と北島三郎の「与作」。途中リズムを変えたり、リハーモナイズの仕方などに南方さんのオリジナリティが発揮されていてとても新鮮でした。カバーというのは原曲に対する距離感でそのアーティストの特徴がより明確に見えるので改めて興味深いなぁと思いました。

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そして前半最後にまたオリジナルに戻って2曲、「I polish my nails」と「kiss」。ここまで聞いてきて改めて気がつくのは、ふたりのコンビネーションが絶妙であるということです。まこりんのうたはたっぷりと水分を含んだ情感あふれるもので、それに絡む南方さんの鍵盤プレイは時に寄り添い時に適度の対する刺激を与えてよりその特徴を際立たせています。様々な側面を感じつつもやはりしっとりとまとめた前半だったと思います。

いつものようにスタッフの手作り焼き菓子とお茶がお客さんに振舞われた休憩を挟んで後半が始まりました。

まずはまこりんがカリンバを弾きながら「やしの実」を歌いました。一気に雰囲気は海辺へと移動します。そしてまこりんは英語で語り始めました。それは「浦島太郎」。ひとりですべての役を語り分けるのですが、ウミガメをひしゃげた声で語った時には会場からクスクスと笑い声が聞こえてきました。そんな時に南方さんがさりげなくピアノで入ってきて「すいぞくかん」が演奏されました。演奏が終わるとそのまままたお話の世界へ。ウミガメに連れられて浦島太郎がやってきた竜宮城で迎える乙姫は少々マリリン・モンローも入ってる?会場はまたもや笑いが湧き上がりました。そしてまたそのまま「みなもと」へ。

その後もまこりんの語りに南方さんが随所に音を入れて進み、いよいよ浦島太郎が海辺に戻ってきてお話が終わるとともに、まこりんもアフリカんドラムを持ってリズミカルにとても自由にアレンジされた「砂山」が演奏されてこのパートが締めくくられました。

美しく奥行きのあるまこりんの声は朗読にもぴったりですし、やはりその歌声と南方さんの選び出す音との組み合わせは「水」というテーマにぴったりだなぁとみのりは感じました。

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さて、またもや転調の仕方などヒネリのあるアレンジで唸らせた「イパネマの娘」を経てライヴも終盤となり、最後にこれぞサウス!のオリジナル2曲、「人待ちうた」と「a season」が演奏されました。「人待ちうた」は少し民謡のテイストも入ったメロディーにまこりんの華麗なカシシ捌きが耳にも目にもグイグイ迫ってきます。いつもと違うエレキピアノの柔らかな音色もこの曲にとてもぴったりでした。そしてラストの「a season」は「to the south」として最初にできたオリジナル曲。しかしすでにその高いクオリティにより彼女たちの代表曲と言っていいものです。その曲が最後に演奏されたことでしっかりと、そしてそれまでの流れをすべて納めるように締めくくられました。

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大きな感動で包まれた会場の大きな拍手によりアンコールへと移りました。演奏された曲は喜劇映画王で知られるチャールズ・チャップリンが作曲した有名曲「スマイル」。南方さんが自分の手拍子でループをその場で重ねていって作ったリズムによって演奏されました。バックには映像も流されさながら短編映画を見ているかのような心地になりました。そして最後にオリジナルCDの最初に収録されている「daba1」で楽しく終了しました。

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まこりんも南方さんもそれぞれたくさんのプロジェクトで活躍中です。みのりの眼コンサートでも「to the south」はもちろん、それぞれの違った姿もお見せすることができたらと考えています。