少し前になりますが、山種美術館で開催されている「松園と華麗なる女性画家たち」展の美術ブロガー対象の内覧会に行ってきました。今年は松園の生誕140年にあたり、これにちなんで、松園を中心に近代・現代日本画壇における女性画家たちの作品を集めたものでした。
(なお以下に掲載している画像は全て関係者の了解済です。また、記事に触れている作品で画像を掲載していないものについては、こちらを参照してください。)

20150503_1650443

展覧会の内容に触れる前にみのりが考える日本画の魅力について書きたいと思います。

日本画はほとんどが和紙などの紙や絹に岩絵具や墨で描かれていてそれぞれに魅力がありますが、みのりがとりわけ強い魅力を感じるのは、絹に岩絵具で描かれたものです。絹はそれ自体が光を発しますし(正確にはより光を反射するということでしょうが)、岩絵具は天然鉱物を砕いて作られていますから、その不均等な粒子にあたった光が乱反射して、それぞれの相乗効果で独特の美しさが感じられます。これは日本画独自の魅力と言えると思います。そしてこの魅力を生むその質感というものは実物をその場で見ないとわかりません。実際、美術館で見るものと図録などで印刷されたものとを比べてみると一目瞭然です。

さらに上村松園の絵には他にはない品の良さというものがあり、こればかりは写真や印刷といった代替物でそのことを伝えるのはかなり難しいです。描く題材は違いますがこれは松園の息子の松篁の絵にも言えることで、その理由はどうやら彼らが使っている絵具にあるのではないかなと思ったりもします。なぜなら松篁の作品はともかく、松園の作品は制作からかなりの時間がたっているにもかかわらずまるで今描かれたものかのように美しく発色も良いからです。ですから、他のどの作品にもいえることではありますが、特に松園の作品は実際に美術館に足を運んで作品を見てほしいと思います。そのことで感じられるものは驚くほど多いことがよくわかると思います。

それにしても松園の絵を見ていて感じるのはどれも無駄が全く排されていて完成度が著しく高いということです。しかしかといって息苦しくなるような緊張感とは無縁で、それは松園の描く人物の柔らかい表情やしなやかなしぐさから来ていると思われます。実際には全く迷いのない描線だけで構成されていて、よほどの修練の上で確信がないとこのような絵は描くことはできないでしょう。そしてそれも松園の絵に漂う品の良さというものに一役買っているのだと思います。いずれにせよ美人画という分野において松園を超える存在というのは考えらないというのがみのりの考えです。

IMG_1572(上村松園「蛍」(部分)山種美術館所蔵)

IMG_1567(上村松園「娘」(部分)山種美術館所蔵)

一方、今回の展覧会は松園の作品以外にも野口小蘋の作品がまとまって見れることもみのりの楽しみのひとつでした。珍しい女性の文人画家、しかも帝室技芸員でもあった小蘋の存在を知ったのは最近のことで、今まさに文人画の魅力にはまっているみのりにとってはまさにぴったりなタイミングでした。今回出品されていた作品の中では特に「箱根真景図」は小蘋の代表作というべき作品で、文人画としては幾分きっちりしすぎていてその世界の中に思いを馳せて遊ぶという面では難しいかもしれませんが、その的確な描写力と大画面の構成力からその実力の高さは十分読み取ることができるもので、やはりこれを機に正当に評価されるべき画家との思いを強くしました。

IMG_1584(野口小蘋「西園雅集図」実践女子学園香雪記念資料館所蔵)

IMG_1586(野口小蘋「西園雅集図」(部分)実践女子学園香雪記念資料館所蔵)

IMG_1588(野口小蘋「西園雅集図」(部分)実践女子学園香雪記念資料館所蔵)

また小蘋と同時代に「東の小蘋、西の青蘭」と並び称された河邊青蘭の作品との出会いもかなりうれしいものでした。青蘭の絵は、文人画という面では真面目さが画面に濃く反映している小蘋よりみのりの好みに合うものでしたが、大作「態濃意遠図」では文人画の典型的な山水風景の中に夥しい後宮の女性が描かれていて、そのひとりひとりに細かく表情が書き込まれているところがなんだか微笑ましかったです。

IMG_1594(河邊青蘭「態濃意遠図」実践女子学園香雪記念資料館所蔵)

IMG_1601(河邊青蘭「態濃意遠図」(部分)実践女子学園香雪記念資料館所蔵)

それら以外にも様々な画家による人物画や風俗画が展示されていましたが、全体を通して今回みのりが一番気に入った絵は木谷千種による「夢の通路」でした。この作品は描かれる女性が松園のものとは違って上品な色気を感じさせ、また姿勢やトリミングの仕方も斬新で、さらには美人画には珍しい背景が描かれているのですが、それも実景なのか描かれる女性の思い描いた夢の風景なのか不明瞭なところがむしろ詩情を生んでいて、非常に豊かな作品だと感じました。松園でひとつのピークを迎えた美人画のさらなる展開がこの作品には感じられて、もっともっと木谷千種の作品を見てみたいと思いました。

IMG_1576(木谷千種「夢の通路」実践女子学園香雪記念資料館所蔵)

今回は山種美術館の所蔵品だけでなく、実践女子学園香雪記念資料館の所蔵品も数多く展示されていて、とても見甲斐のある展覧会となっていました。そして香雪記念資料館でも関連した展覧会が行われていますので、そちらも近いうちに見に行きたいと思っています。

[開催概要]
会期: 2015年4月18日(土)~6月21日(日)
※会期中、一部展示替えを行います。
会場: 山種美術館
主催: 山種美術館、日本経済新聞社
協力: 実践女子学園香雪記念資料館
※本展は、山種美術館と実践女子学園香雪記念資料館の連携企画です。 
開館時間: 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日: 月曜日(但し、5/4は開館、5/7は休館)
入館料: 一般1200円(1000円)・大高生900円(800)円・中学生以下無料
※( )内は20名以上の団体料金および前売料金。
※障がい者手帳、被爆者手帳をご提示の方、およびその介助者(1名)は無料。
[お得な割引サービス]
きもの割引:会期中、きものでご来館のお客様は、団体割引料金となります。
※ 複数の割引の併用はできません。