待ちに待った古川麦さんのレコ発ライヴに行ってきました。

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レコ発といってもアルバムは昨年の秋にリリースされていていたのですが、ベース、ドラムとの基本フォーマットにパーカッション、トランペット、トロンボーン、さらに弦楽カルテットが加わるといった大編成によるものだったのでその準備に時間がかかったのかもしれません。しかし結果としてかけた時間も納得の素晴らしい内容の演奏を聴くことができました。

髙城晶平さんの手作り感あふれるオープニング・アクトの後セッティングを経てメンバーが登場し、始まった曲は彼のミニアルバムでオープニングを飾ったインスト曲。この時点で演奏のクオリティの高さが際立つものとなっていて、これから展開される世界への期待が否が応でも高まるものでした。そこからの切れ目ない「グリーン・ターコイズ」への流れはやはりミニアルバムと同じ。でも今回はぐっと広がりが増したフルバンドでしかもリズムがより強調されていて聴いていてうきうきしてきます。そしていよいよ麦さんのうたが始まった途端、楽器の音にのるその声の存在感に耳を奪われました。大体のコンサートではマイクを通した歌声はそのバランスに最初は違和感を感じることが多いのですが今回はまったくそれがなく、それはきっとしっかりリハーサルで音が作られたのだろうなと想像しました。またそれを可能にする明確なビジョンとそれに見合う実力が麦さんにあったのだろうと思います。

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アルバムでは編成が大きくてもどの曲も落ち着いた印象を感じるものでしたが、ライブではそれとは逆にアグレッシブに感じられました。大きいダイナミクスによって瞬く間に会場は興奮に包まれ、曲ごとにクライマックスが訪れたかのように割れんばかりの拍手が続きましたが、それは麦さんも冗談交じりに「アンコール?」と言うほどの大きな反応でした。しかし重要なのは、どの曲でも勢いに任せるだけのイケイケの演奏ではなく「引き」もしっかり踏まえたメリハリのある構成感がしっかり存在していたことです。だからこそ各曲の演奏を追うだけでひとつの音楽的なストーリーが感じられそのクライマックスで大きなカタルシスを得ることができたのだと思います。このように勢いを保ちつつコントロールされた音楽を奏でることはなかなかできるものではありません。その点で麦さんとメンバーの皆さんの一段高いレベルが十分に証明されていました。

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各メンバーの演奏は、ソロなどでそれがフィーチャーされる時だけでなくともそちらに耳が引かれる場面が多々ありました。とりわけバイオリンの牛山玲名さんの美しい音色で歌われるフレーズは印象に強く残りましたし、もはやベテランの域に達しているトロンボーンの青木タイセイさんのプレイも際立ちました。また多くの部分でパーカッションとコーラスを担当していた角銅真美さんの演奏も麦さんの音楽に華やかな彩りを加える素晴らしいものであったと思います。

チェロの関口将史さんがアレンジしたという弦楽カルテットのパートも、規定のラインをなぞるだけでなく、対位法的な動きをしたり突然水を当ててびっくりさせるような強烈なフレーズを挿入するなど、手を変え品を変えた要素を加えることにより確実に音楽の世界を広げることに貢献していました。昨年7月に新大久保のホールで行われた管楽器のみ加わったバンド編成でのライブと比べて、単純に弦楽カルテットが加わっただけではなくそこで化学反応を起こしたようなさらなる変化を感じたのはみのりだけではないと思います。

しかし、みのりが今回一番強く印象的に感じたのは麦さんの歌声の素晴らしさでした。これまで聴いてきた麦さんの音楽では、とりわけ彼の達者なソングライティングや編曲能力と卓越したギター演奏の技術に注意がいっていて、どちらかというとナイーブさを感じさせる彼の歌声はそれらに添えられている程度の認識しかありませんでした。しかしそれは大きな間違いであることが今回のコンサートを見てわかりました。むしろ彼の歌声は骨太で力強く、これだけ大人数の編成になっても埋もれるどころかかえって輝きを増しているかのようでした。すべての音の中心には彼のうたがあり、逆に言えば彼のうたはこれほどの大きなスケールに耐えうる大きな音世界を内包しているのだと思います。

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集まったお客さんも素晴らしかったです。恐らく直接のお知り合いの方も多かったと思いますが、悪い意味での内輪な感じがまったくなく、まっさらに麦さんたちの演奏を聴きそれに対してストレートに表現された反応は熱狂的でしかしとてもあたたかいものでした。演奏家たちとの理想的なコミュニケーションの成立が感じられて、今回のライブのクオリティの高さに間違いなく貢献していたと思います。

ライブでは1曲、今回のために作られた新曲が披露されました。これはアルバム収録曲とは趣の異なる次なる一歩を感じさせるものでした。このライヴをひとつの区切りとして麦さんはこれから新しい世界へと進んでいくのだろうと思います。もちろんそれはこれまでの成果を踏まえた上でのものでしょう。今回こういう予感を感じさせてくれたこともみのりにとってはうれしいものでした。そう、麦さんはまだまだ若くこれからののびしろが十分にあります。これからどんな風にその音楽が広がっていくのかみのりは楽しみで仕方がありません。きっとこれからも麦さんは期待以上の進化をしていくのでしょう。みのりもそれをずーっと追いかけていきたいと思います。

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古川麦 Baku Furukawa “far/close” release live 【Coming of the Light】
@WWW 2015年3月17日

Baku Furukawa “far/close” Orchestra:
古川麦(Gt., Vo.)
田中佑司(Dr.)
千葉広樹(Cb.)
青木タイセイ(Tb.)
谷殿明良(Tp.)
角銅真実(Perc., Cho.)
牛山玲名(1st Vn)
田島華乃(2nd Vn)
飯田光純(Va)
関口将史(Vc)

セットリスト
1. Introduction
2. Green Turquoise
3. Voyage
4. 天文台通り
5. A Pickled Star
6. El Viento
7. Outdoors
8. Abraham
9. We can tango in the dark
10. メキシコの夜
11. 芝生の復讐
12. Coming of the Light
13. Summersong
14. Seven Colors
アンコール Reboant

撮影:鈴木竜一朗