5月10日に行われた「みのりの眼コンサート vol.5 古川麦 with 田中佑司」についてレポートします。
(なお、以下に掲載している画像はリハーサルで撮影されたものを使用しています。)

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今や飛ぶ鳥を落とす勢いの麦さんと様々なセッションでその存在感をアピールしている佑司さんに対する人気はさすがというべきで、予約は早々に完売し急遽会場のキャパぎりぎりまで席を開放したもののそれもすぐに売り切れてしまうほどでした。

当日はすっきりと晴れた日曜日の午後、会場の大津ギャラリーは地下にも関わらず地上の自然光が取り込まれている設計となっているため、のどかな空気が会場にも漂っていました。そしてお客さんが皆さん揃って定時を迎え、いよいよコンサートは始まりました。

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みのりの前説の後、まずは麦さんだけのソロで3曲披露されました。どれも曲についてのお話を交えながらのリラックスした雰囲気の中で、まずは「green turquoise」と「天文台通り」。ここら辺はすでに鉄板となったオープニングにふさわしい展開ですが、ギターとうたというシンプルな構成の中にトランペットを模した口笛なども加えたりして決してこじんまりとした感じがしません。そして3曲目は意外にもピチカート・ファイヴの初期の名曲「皆笑った」。麦さんのうたが、ピチカート印がしっかり刻まれたコード進行と歌詞に全く違和感なくフィットしていたのが印象的でした。

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そしていよいよ麦さんの紹介により佑司さんが登場!キメキメのポーズをとり、まずは会場のお客さんの最初の笑いをとりました。そしてまじめに曲についての話をしようとしている麦さんを細かく茶々をいれたりするのですが、麦さんはたまにそれをいさめたりして、そのもはや漫才のようなやり取りはあまり普段コンサートに行かない人により親しみのもてるものになっていたようです。またそれは良い意味で麦さんの生真面目さを解す結果にもなっていたと思います。

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そして二人で新曲「Coo Coo」を。この曲はオーストラリアの麦さんのおばさんの為に作られた曲だそうで、そのとても優しいメロディアスな展開は麦さんの慈しみの心情がそのまま現れたように感じられます。みのりはこの曲を聴くと必ずビートルズの「yesterday」を感じるのですが、麦さんは実際ポール・マッカートニーに匹敵するほどのメロディ・メイカーだと思います。続いて「we can tango in the dark」。全然周りが見えないところでダンスするカップルが向かい合うイメージだそうですが、幻想的というより非現実ではない懐かしさをみのりは感じます。そしてこれは麦さんの他の多くの曲にも感じる共通点だと思うのですがいかがでしょう。

そして前半最後の曲「a pickled star」に突入。実はこの曲は7拍子なのですが軽快でノリもよく、佑司さんもドラムセットにいろいろな音の出る装備を加えて大活躍です。スキャット部分はふたりで声を合わせて大声で歌い、客席も否が応にも盛り上がり興奮の絶頂に至りました。

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休憩時間はみのりの眼スタッフによる手作りカップケーキと紅茶が振る舞われ、盛り上がりからまた日曜の午後のリラックスした時間へと戻りました。

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さて後半はブラジルのシンガーソングライターであるジョイスの曲「baracumbara」から始まりました。実はこの曲は今回のコンサートを開くにあたってみのりが麦さんにリクエストしたものでした。麦さんはそのギタースタイルを身につける段階でジョアン・ジルベルトの影響を多いに受けたことは有名ですが、みのりは麦さんの音楽を聴いていて感じるブラジル音楽の性格はボサノバというよりむしろもっとスピード感とエネルギーのこもったサンバだろうと思っていたので、ジョイスの曲はとても合うのではないかと思っていたのです。ただしこの曲、オリジナルはジョイスのギターとスキャットとともに、エグベルト・ジスモンチのサンフォーニャ(ブラジル風アコーディオン)が全面的にフィーチャーされていますので、そこら辺が難しいのではないかと思っていました。しかし長いイントロ部分ではメロディを佑司さんがピアニカで奏で、オブリガードで麦さんが時に鳥のさえずりを感じさせる口笛をふき、テンポアップしたところで佑司さんがスネアブラシに持ち替えてドラムプレイに移り、ギターとともに軽快なリズムを見事に作り出していて、結果として素晴らしいカバーとなっていました。曲が終わってふたりも思わず「気持ちいいねぇ〜!」と言い合うほどで、まさに日曜の昼下がりにぴったりな演奏でした。

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続いてまた意外なカバー曲が出てきました。ボブ・マーリーの「waiting in vain」。これは普段の麦さんがやらなさそうな曲を佑司さんから提案したとのことで、これがまた日曜のこの時間にぴったりなリラックスムード溢れるものでした。とりわけテーマ部分で二人がハモる部分は本当に気持ちよかったです。ボブ・マーリーでもしっかり消化して自分の音楽にできる麦さんはさすがというほかありません。ちなみに佑司さんは「日曜の午前中にベランダでホットケーキを食べる」というイメージで演奏していたとのことですが、これに対し麦さんは完全否定でまた会場が苦笑するという場面も。

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3曲目は「メキシコの夜」。この曲は3歳頃のメキシコでの強烈な記憶がもとになっているとのことで、イントロの佑司さんのピアニカと麦さんの口笛から始まり、曲全体に渡るピアニカとギターの音色の重なりは特にノスタルジックな雰囲気を演出していました。演奏後麦さんは「この曲やった後は黙っちゃう」と言っていましたが納得です。しかしここでも佑司さんが「この曲やった後はなまっちゃう」と聞き間違えて笑いをとっていました。

4曲目は「abraham」。台湾の抗日運動がテーマのこの曲についていつも麦さんは多くを語ろうとしませんが、ドラマティックな展開を見せてそのピークで突然終了するのを聴くと語らなくともその衝撃のようなものが伝わってくるようにみのりは思います。

次は新曲の「why」。佑司さんがピアノに移動し、彼のピアノがフィーチャーされているイントロは水面の揺らぎを感じさせ、それはECMレーベルの音楽と同質なものと思いました。やがて跳ねる3拍子へ移行し再び元に戻るという、ひたすら美しい曲です。これは早く音源化され繰り返し聴きたいと強く思わせるものでした。

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そして最後に宮澤賢治作詞作曲の「星めぐりの歌」で締めくくられました。今ではすっかり有名で様々なアーティストにうたわれている曲ですが、ここではやはり佑司さんがピアノを弾きギターと美しく音色が融合しうたを支えていました。途中でギターがポリリズムのパターンを奏でることでシンプルなこの曲が単調にならないように工夫されていました。プログラムのラストをしっとりとまとめていて、会場全体が最後の音が聞こえなくなるまでじっと耳をすました後に大きな拍手がわき上がりました。

二人は一度舞台袖に引いたものの、直後に佑司さんがアンコールを待ちきれずに雄叫びをあげながら戻ってきて、麦さんもそれに続き、皆が望むアンコールへと移りました。この日は実は母の日。それにちなんだ話をといって麦さんは話しだすもののうまくつながらず苦笑、でもそこで語られた、会ったことのないおじいさんが残した映像を自分がみることによって、おじいさんの視点を追体験するという不思議さというのは、そのまま麦さんの音楽を聴いて感じるある種の不思議さと重なる部分もあり、ファンとしては楽しいお話を聞けたと思います。また佑司さんも自分のルーツについてユーモアを交えて話していましたがそれも良い余韻を感じさせてくれました。というわけでアンコールは「voyage」。ここでも佑司さんはパーカッションではなくピアノを奏で、いつもより比較的穏やかな演奏となりましたが、この日のコンサートのアンコールとしてぴったりなものであったと思います。

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この日集まっていただいたお客さんの声をいくつか紹介します。

・子供と一緒に音楽を聞けたのは子供向けコンサートのみだったので、本当に楽しい、嬉しいひと時でした♪麦さんの心地好い歌声と田中さんの楽しい人柄☆絶妙でしたね(笑)また聞きたいなぁ!

・麦さん素晴らしいですネ。田中さんの鍵盤姿もなかなか見ることができないので感動です。帰ってからも何だか幸せなもので満たされております!

・演奏はもちろん、麦さん普段あまりMCしないけど、今日はたくさん話してくれて曲にまつわる意外なエピソードがたくさん聞けたのも嬉しかったです〜!

・間近で素晴らしい演奏をきくことができて良かったです。

・古川麦さん、かなり私の好きな感じの音楽でした。購入したCDもとても良かったです。joyceとpizzicato fiveのカヴァーは好きな曲だったので、ちょっとグッとくるものがありました。オリジナルの曲たちも、どこか懐かしいような暖かさと切なさがあって良かったです。ブラジル風に言う所のsaudadeな感じでしょうか。郷愁を感じさせる様な音楽が素敵でした。

麦さんも佑司さんもそれぞれいろいろな組み合わせで全国で音楽活動をしています。みのりの眼では今後もこの二人の様々な活動を紹介していきたいと考えています。ご期待ください!

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