まずはこの映像をご覧ください。

今回ご紹介するのはここでギターを弾きながら歌って、極上の音楽をうみ出している古川麦(ふるかわばく)さんです。

みのりが麦さんを初めて知ったのは信頼する音楽愛好家さんのつぶやきからでした。ちょうどそのころトリオでのライブがあり、そこでドラムを担当していたのが大好きな田中佑司さんでしたので、きっとこれは良いに違いないという根拠のない確信をもち(みのりのこの確信は結構な確率であたります)、さっそく当時発売されていたミニアルバムを購入したのでした。収録されている曲はほとんど自分だけでギター、ピアノ、うた、コーラスなどを多重録音して作られた音楽でしたが、この時点ですでにスーッと体に入り込む心地よさがあり、みのりはすっかり麦さんの音楽のとりこになってしまいました。

古川麦

それから数年経った昨年、まさに満を持したファーストアルバム「far/close」が発表されました。このアルバムには先のミニアルバムに収められた曲も含まれていますが、いずれも装い新たに作りなおされていました。ベースとドラムのトリオを基調にストリングスや管楽器のアンサンブルなどがセンス良く配されていますが、ゴージャスというよりもつつましい印象をもつのは麦さんのパーソナリティによるものかと思われます。

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ちなみにみのりは昔からさまざまなジャンルの音楽を聴いてきてましたが、例えばポピュラー音楽ではストリングスなどが使われることはあっても、管楽器によるアンサンブルが使われることは少なく、もっと使われるといいなとずっと思っていました。しかしここ数年の間に、主にブラジルやアルゼンチンなどのポピュラー音楽でそのような音楽を耳にする機会が増えてきました。もともとかの地ではクラシックとポピュラーミュージックとの境界がゆるやかであるためそのような状況が生まれたのだと思いますが、それらは今チェンバーポップの名のもとで日本のポピュラー音楽の中にも広がっています。東京芸術大学を卒業している麦さんの音楽もその流れの中でとらえることできるものかもしれませんが、いずれにせよみのりにとってうれしい状況であることは間違いありません。

「far/close」に収められたそれぞれの曲のスタイルはバラエティに富んだものになっていますが、全体で大きなまとまりが感じられるのは麦さんのスタイルがしっかり築かれているからでしょう。そのどれもが親しみやすいもので、恐らく最初の数十秒を聴けば誰もがその音楽に魅了されるに違いありません。すでに一部の音楽ファンの間で口にされることが多いようですが、ちょっとしたきっかけでもっとたくさんの人に聴かれるようになる可能性をもっている音楽家だと思います。

ところで麦さんのプロフィールを見るとボサノバの神と称されるジョアン・ジルベルトからの影響が語られていますが、みのりは麦さんのギタースタイルにあまりそれを感じたことがありません。いわゆるボサノバのリズムを直接使うことがないのもありますが、本質的に内向性をもつジョアンに比べて麦さんは同様な繊細さをもちつつも外に開かれているからだと思います。ライヴなどを見ると結構熱くパーカッシヴなプレイもあり、その独自性からもみのりはブラジルのポピュラーミュージシャンのレニーニにイメージを重ねることがあります。しかしそれもあくまでイメージだけの話で、そのスタイルは彼固有としか言えないものになっていると思います。

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さて、来る3月17日(火)に渋谷のライヴハウスWWWで「far/close」の録音に参加したメンバー全員が参加する一夜限りの豪華なライヴが開催されます。麦さんはいろいろなプロジェクトやソロ活動も盛んなのでその音楽に触れる機会は少なくないですが、この傑作アルバムに収められた音楽世界を生で体験できるのは恐らくこの日を逃すとなかなかないと思いますので、最初にあげた映像を見て興味を感じた方はぜひこのライヴを見に行ってほしいです。みのりはこの会場も大好きな場所ですので、そのようなところで大好きな麦さんの音楽を聴くことができるのが楽しみでなりません。きっとアルバムよりも熱い演奏が聴けるにちがいありません。