みのりはそこそこ映画を見てきましたが、前にも書いたとおりとても偏ったものでした。みのりが見てきたヨーロッパの映画もそのほとんどはフランス映画で、それに慣れた身体にはたとえばイタリア映画などはいささか重く感じられて、名作とよばれるものをいくつか見てみたもののいまひとつ乗り切れないものばかりでした。

そんなわけでベルナルト・ベルトルッチはイタリアの巨匠監督として名前はよく知っているものの、その映画はまったく見たことがなくまた見ようとも思っていませんでした。しかし先日テレビでやっていた「リトル・ブッダ」をなんとはなしに見てみたところ、やはり見ず嫌いは損をするということを思い知らされました。この映画、「ラスト・エンペラー」などに比べてあまり話題にならなかったと思うのですが、みのりにとってはとても素晴らしい作品でしたし、一般にももっと注目されていい映画ではないかと思います。

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どのジャンルでも言えることですが、表現されたものはなんらかの既存のイメージの再現ではなく、その固有の技法を使いまたその論理に従って新たに作り出されるものだとみのりは考えています。ですからこの映画についても主なモチーフである仏教だとか輪廻転生といったものが正しく再現されている必要はなく、それよりもその技法による語り方こそが重要で、見る側においては仏教についての知識がなくても問題ないと思います。その意味でこの映画はいくつかのいかにも人工的な表現で興ざめさせる部分はありますが、それを補って余りある美しい映像や音楽に溢れ、巧みな話法によって進んだ先に現れるドラマのピーク、すなわちチベット僧侶ノルブがその師の転生を3人の子どもたちに告げるシーンでは大きな感動に包まれます。ここでの感動はまさに映画を見る喜びそのものだと思います。

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またその中で音楽の果たした役割の大きさについて、特に強調しておきたいと思います。この音楽を担当した坂本龍一さんの音楽をみのりは長い間聴いてきましたが、彼の残した大量で多種多様な音楽の中でもひとつのピークに達したものだと思います。伝統的なインド音楽も結構使われていて、その部分を彼がどのようにディレクションしたのかはわかりませんが、それを抜いてもオリジナルで作られたオーケストラの重厚で荘厳なテーマ曲をはじめとしてこれらすべてはまさに坂本さんの渾身の仕事であり、ベルトルッチの期待に見事に応えたものだと思います。エンドロールで流れるテーマ曲に体をゆだねている時の心の平穏を普段の生活ではなかなか得られないでしょう。

さらにエンドロール後の最後のシーンをあえて指摘しておきたいと思います。この映画を世の中に開かれたものとする監督のこの編集は心憎いもので、ここまで見てこそ!と思わせるもの。もしこのシーンの存在を見逃しているのであれば、ぜひもう一度この作品を最後まで見てほしいと思います。

それにしてもシッダールタを演じたキアヌ・リーヴスは美しいですね。特に王子として城の中で大事に育てられ、まだ貧困や病気、死などを知らぬ無垢な青年という、なかなかありえない人物も彼のその容姿により説得力を持っていました。当時の彼も言うまでもなくハリウッドで活躍していた俳優ですが、その彼がハリウッドとは全く趣の違うこの映画においても違和感なく収まっていることに感心しました。「マトリックス」後の彼の活躍をみのりは知りませんが、もっともっといろいろな映画で見たくなる俳優です。そういえば「マトリックス」でも独特の透明感を携えていたなと思い出しました。

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「リトル・ブッダ」は「ラスト・エンペラー」「シェリタリング・スカイ」と合わせてオリエント3部作というのだそう。みのりは「リトル・ブッダ」ばかり何回も見て他の作品は見ていないので、とりあえずこれらをさかのぼるかたちで見て行こうと思っています。また、「1900年」や「暗殺の森」といった名作の誉れ高い作品もそのうち見ようという気になってきました。