みのりが現在よく聴いている音楽はブラジルやアルゼンチンの音楽です。このうちアルゼンチンの音楽は比較的最近、日本で密かにブームになりつつあるのと同時に聴き始めましたが、ブラジル音楽を聴き始めたのはもう四半世紀ほど昔のことになります。それまでもボサノヴァの斬新な和音に心奪われたりもしていたのですが、本格的にハマったのは大学時代に先輩が貸してくれたカエターノ・ヴェローソのアルバムからでした。最初はピンとこなかったものの、大好きだったアヴァンギャルドなアーティストのアート・リンゼイがプロデュースした作品などをきっかけにどんどんブラジル音楽にのめりこんでいくことになりました。それからほどなくしてセルソ・フォンセカを知りました。

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セルソ・フォンセカは本国のブラジルでは押しも押されぬ評価を得ているシンガーソングライターでありプロデューサーですが、ここ日本では今だに一部の音楽ファン以外にはあまり知られていないようです。そもそもブラジル音楽自体、ボサノヴァくらいが一般的に知られるものの、その他のポピュラー音楽はメジャーでないと言えるのではないでしょうか。しかしセルソ・フォンセカはその中でも最も知られてしかるべきアーティストだとみのりは思っています。

セルソ・フォンセカはカエターノ・ヴェローソやジルベルト・ジル、ミルトン・ナシメントの活動にギタリストで参加したのがそのキャリアの最初ですが、これらのMPB(ブラジル・ポピュラー・ミュージック)の中心人物たちに登用されただけでもその才能が証明されているようなものです。その後に満を持して本格的にソロ活動を開始しますが、驚くことにそれから現在まで発表した作品はどれもクオリティが高く、駄作は一作としてありません。

ですから、セルソ・フォンセカでおすすめの一枚と聞かれたら、CD屋さんでまず目に入った一枚で間違いないとみのりは答えるでしょう。詩人ロナルド・バストスと共同名義で発表された初期の3枚は言わずもがな、ソロ名義になってからのものもどれもおすすめです。しかしここでは日本では発売されなかった「フェリアード」をみのりの一番のおすすめとしておきます。

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セルソ・フォンセカの音楽の魅力と言えばなによりその洗練度の高さでしょう。特にソロ名義以降の作品はアコースティックとエレクトロニクスとの融合がごく自然となされていて、他にこれほど見事にこなしている人は思いつきません。そのため彼にプロデュースを頼むアーティストがたくさんいるのですが、不思議と彼らの作品は本人の作品ほど惹きつけられることがありません。ここに二つ目の魅力が隠れているのですが、それは彼の声の存在です。初めて彼の歌を聴いたときはカエターノ・ヴェローソと間違えるほどでしたが、つまりセルソ・フォンセカの声はカエターノと同質の深さをもつ甘く魅力にあふれたもので、それがなくては彼の音楽は完成しません。その証拠に、ロナルド・バストスとの最初のアルバム「ソルチ」はストリングスが入るもののほとんど彼のギターの弾き語りという最小限の音だけで作られていますが、今なおその魅力が全く減じていないのです。

「フェリアード」は、これまでの彼の作品の中で幾分ゴージャスな印象があります。それは冒頭のスクラッチ音やラップなども彼の持ち味を壊さない程度にうまく使われ、アレンジ面でも通常のバンド編成に弦楽器だけでなく管楽器も加えられていて、どちらかというと内省的な彼の歌声も比較的開放的になっているからでしょう。そのためより間口の広い音楽となっていてより多くの人に訴えかけるものだと思うので、まだセルソ・フォンセカの音楽に触れたことのない人はこの作品から入ると自然にその世界に入って行けるでしょう。

これほどの人なのに今だに単独での来日がないのは非常に悲しいことです。日本人シンガーのchieさんやクレモンティーヌ、またジョイスとの抱き合わせでは来ていて、みのりはジョイスのゲストで来たときに初めて生で見ましたがやはり期待にたがわない見事な演奏ですっかり聴き惚れました。「フェリアード」発表に際して行われたライヴの映像がDVDになっていて、それを見るとアルバムよりもさらに豊かなステージが繰り広げられていて、ぜひともこのようなすばらしい世界を直に見てみたいものです。

セルソ・フォンセカと同様にみのりが大好きなブラジルのアーティストにアドリアーナ・カルカニョットがいて、彼女も日本ではあまり知られていないけれど本国での人気実力ともにトップクラスにいる人です。しかし彼女はこれまで2回単独で来日して、そのうち1回は有楽町のよみうりホールで公演を行いました。セルソ・フォンセカも同様なことが可能ではないかと思っているのはみのりだけでしょうか。なおアドリアーナについてはまた改めて書きたいと思っています。

またアルバムもオリジナルアルバムとしては2007年を最後に出ていないのですが、そろそろ新しいアルバムを出してほしいと思います。毎回さりげなく新機軸を出してくる人なので次なる展開がとても楽しみです。